第78章

熱い湯が頭上からどっと降り注ぎ、張り詰めた筋肉の稜線をなぞって流れ落ちる。鍛錬で溜まった疲労と、胸の奥で渦巻く荒い感情まで洗い流そうとするみたいに。

渡部綾香は目を閉じ、水に身を委ねた。

――けれど。

隣の仕切りから漏れてくる生々しい気配が、水音をしぶとく突き破って耳に刺さる。

最初は押し殺した荒い息と、湿った衝突音。やがて女の喘ぎが混じりはじめた。

「ぁ……ん……っ、う……」

「もっと……すごい……あっ……ダーリン……」

渡部綾香は眉をひそめ、さっさと流して出ようと決める。

こういう場所は人種が雑多だ。壁越しの下世話に興味はない。

だが次の瞬間、男のしゃがれた声が、得意げ...

ログインして続きを読む