第82章

午後のあの一件程度で、市役所の事務局長の親族にまで圧をかけるなんて――本当にやるとは。

少し、予想外だった。

鈴宮京也が身内に甘いのは知っている。だがそれは、鈴宮家の中枢の利益や面子が絡むときの話だ。こんな些細な揉め事なら、ふつうは鼻で笑って終わりにする。まして、あんな露骨で強硬なやり方など。

胸の奥を、針で掠めるような違和感が走った。けれど顔には出さず、渡部綾香は淡々と言う。

「村宮さん、ご丁寧にどうも。もう済んだことですし、私は気にしていません。こんな高価なもの、受け取れませんからお持ち帰りください」

「いえいえいえ! 渡部さん、どうか受け取ってください! こちらが当然のことを...

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