第87章

鈴宮家。

渡部綾香は書斎で、闇夜組織から届いた暗号化ファイルを何本か処理していた。そのうちの一本は、林野正明が最近、海外のペーパーカンパニーと頻繁に資金をやり取りしている件についての最新分析だ。

コンコン、と扉が叩かれる。小山の取次で、鈴宮クルミが来訪したという。

渡部綾香は眉をひそめた。――何の用だ。

小山に命じ、応接用の小さなサロンへ通す。

今日の鈴宮クルミは、珍しく派手さを抑えていた。顔には作り物の笑みを貼りつけ、渡部綾香を見るなり距離を詰めてくる。

「兄嫁! 忙しいところ? 邪魔しちゃった?」

渡部綾香は手元のタブレットを置き、よそよそしくも礼儀は崩さない。

「鈴宮さ...

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