第90章

渡部綾香が事情聴取を終えて間もなく、黒いセダンが唸りを上げて突っ込んできた。

車はほとんど乱暴と言っていい勢いで、規制線の外に急停車する。ドアが開き、鈴宮京也が降り立った。

濃い色のコート。冬の夜気より冷えた顔色。刃物みたいな視線が荒れた現場を一撫でし、最後に渡部綾香へ落ちる。頭のてっぺんからつま先まで無遠慮に検分し、裾に埃がついている程度で無事だと確かめると、ようやくその冷たい目がわずかに逸れた。

「どういうことだ」

声は低い。だが、その場の空気を一段沈める圧があった。

さっきリリスに平手を食らった警官が、青い顔で前に出る。

「鈴宮さん、通報を受けて到着した時点で発砲はすでに終...

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