第111章

会議が幕を下ろし、私と松本秘書はそれぞれ段ボール箱を抱え、鈴木グループのオフィスビルからゆっくりと歩き出した。松本秘書の顔には淡い感慨が浮かび、その瞳からは名残惜しさが滲み出ている。彼が両手でしっかりと支える段ボール箱は、まるでかけがえのない思い出の品であるかのように見えた。私は腕の中の小さな箱を見つめる。そこには、亡き母が生前オフィスに残していた最後の私物が収められている。これでもう、私はただの私であり、鈴木グループもまた、ただの鈴木グループにすぎない。私たちの間にはもう、何のしがらみも残っていないのだ。

駐車場で、私と松本秘書は別れを惜しんだ。松本秘書はそっと段ボール箱を下ろすと、誠実...

ログインして続きを読む