第224章

一時間の旅路を終え、列車は緩やかにT市のホームへと滑り込んだ。胸の内で弾ける高鳴りは、まるで打ち上げ花火のよう。私は逸る気持ちを抑えきれず、人の波に身を任せて車外へと踏み出した。

こぢんまりとした地方都市だ。改札へ向かう乗客もまばらで寂しい。それでも私の足取りは軽い。駅を出て深く息を吸い込むと、そこには微かに青木易揚の気配が混じっているような気がした。駅前広場に視線を走らせ、愛しい人の姿を探す。けれど——青木易揚の姿はどこにもなかった。

吐き出された人波が散り、広場には閑散とした露店が残るのみ。私はコートの襟をかき合わせ、行き場を失ったように立ち尽くしていた。

その時だ。どこからともな...

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