第226章

平沢雪乃からの電話は、心からの真摯な誘いだった。法律事務所への復帰。それは私がずっと夢見てきた場所に戻れるということだ。本来なら飛び上がらんばかりに喜ぶべきところだろう。だが、山本翔一の名が出た瞬間、熱を帯びていた心が一気に冷え込んだ。

「ねえ、知ってる? 私が青木易揚とT市で会っていた時、なんと山本翔一まで押しかけてきたのよ」

私は周囲を警戒して見回しながら、声を潜めた。

電話の向こうで、平沢雪乃が息を呑む気配がした。

「嘘でしょ? どうしてあなたがT市にいることがバレたの?」

私は受話器に向かって、諦め混じりの溜息をつく。

「青木易揚のお父さんと弟と一緒に来たの。どうやら何か...

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