第272章

警察署での長い手続きを終えると、潮が満ちるように、体の芯から疲労が込み上げてきた。もう他にやるべきことがないのを確認してから、私は警察官に一礼し、会社へ戻ることにした。

お腹の子が大きくなるにつれ、思うように体が動かなくなってきた。動作一つひとつが鈍くなるのがもどかしい。それでも救いなのは、ここ数ヶ月、胎児の発育が順調なことだ。あと少し、臨月まで無事に持ちこたえれば、この新しい命に会える。

椅子から立ち上がる際、少し足元がよろけた私を見て、山本翔一が慌てて駆け寄ってきた。

「静香、危ない。俺につかまれ」

今さら何を、という冷めた感情しか湧かない。私はさりげなく腕を捻り、彼の手を避けた...

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