第302章

けれども、私の心はここにあらずといった状態で、頭の中はまだ片付いていない仕事の山で埋め尽くされていた。

里弥の歓声につられて、私は無意識に視線を向けた。そこには、子供たちに囲まれた風船売りのピエロがいた。色とりどりの衣装に身を包み、顔にはペイント、そしてひときわ目立つ真っ赤な鼻。彼は慣れた手つきで子供たちに風船を配っている。

夕陽の余韻が降り注ぎ、ピエロと子供たちの姿を黄金色の輪郭で縁取っている。その光景は、どこまでも静かで美しかった。里弥は風船に心を奪われたようで、目をきらきらと輝かせながら私の手をぐいと引っ張った。

「ママ、ママ、見て! あのピエロさんの風船、すごくきれい。私、あれ...

ログインして続きを読む