第339章

今回、コール音はわずか数秒で途切れた。大前恭也が出たのだ。

私の中で、喜びが一瞬だけ閃いた。

「……ああ」

受話器越しに聞こえる大前恭也の声には、隠しきれない疲労の色が滲んでいた。

だが、今の彼を気遣っている余裕などない。私は矢継ぎ早に言葉を紡いだ。

「平沢雪乃さんが大変なの。すぐに助けに行かないと」

「なんだと?」

低く沈んでいた大前恭也の声が一気に張り詰め、その響きから疲労が消え去り、代わりに焦燥が満ちる。

「静香、どういうことだ? 俺の妻は……雪乃は今どこにいる!」

彼の激情に呑み込まれないよう必死に踏みとどまり、私は努めて平静を装って答えた。

「まずは落ち着いて。...

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