第38章

「君に会いたい人がいるんだ。でも、時間はあまりない」

田中太郎は心配そうに扉の外を見やった。

「信頼できる部下を二人、外で見張らせている。外には奴らの目があるかもしれないからな」

田中太郎は部屋を出た。そして、黒装束の小林一郎が入ってきた。小林一郎を見た瞬間、私は少し泣きたくなった。さっきの山本翔一とのもみ合いで体力を使い果たしていた。馴染みの戦友を見て、ようやく体の力が抜けていくのを感じた。

小林一郎は記録帳を取り出した。そこには彼と平沢雪乃が集めた証拠が細かく書き込まれていた。

私はそれを丁寧に見ながら、新たな疑問が浮かんできた。

「あの二人、会ったの?」と小林一郎に尋ねた。...

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