第45章

「すみません、お二人の邪魔をしてしまって」田中太郎は私に複雑な視線を送りながら、軽く頷いて身を翻し、その場を離れようとした。

「待て!」山本翔一が鋭い声で制止した。

田中太郎は体を戻し、職業的な笑顔を浮かべながら山本翔一に尋ねた。

「山本社長、何かご指示でもございますか?」

私には今の山本翔一が非常に危険な状態であることが感じ取れた。まるで怒りを爆発させる機会を狙う猛獣のようだ。おそらく田中太郎の作り笑いがあまりにも明らかだったため、山本翔一は怒りを表に出せないでいるのだろう。

「まだ誰も俺の目の前で山本家の人間を連れて行ったことはない。田中隊長、今日は俺の妹を連行していくつもりの...

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