第461章

手術室から漏れ出す冷気が消毒液の匂いを纏い、骨の髄まで染み込んでくる。廊下の突き当たり、非常扉が閉まる瞬間に揺らいだ幻影をじっと見つめていると、大前恭也が背を向ける直前に残した、血の匂いが漂うような誓いの言葉が耳に蘇ってきた。魔法瓶が砕け散る音が今も鼓膜を震わせ、脳裏には黒焦げになって丸まった子供の姿が焼き付いている。その光景は、記憶の中のチャリティーパーティーで見た、大前さんが嵌めていた翡翠の指輪が放つ冷たい光と、幾度も重なり合っていた。

「もう見ないで」

平沢雪乃がふいにしゃがみ込み、残ったガラスの破片を器用に指先で避けながら、散らばったティッシュをミルクの染みに被せた。その手つきは...

ログインして続きを読む