第53章

あの夜、山本翔一との話し合いが決裂して以来、私はここで佐藤美咲の看病を数日間続けていた。医師の診断によれば、佐藤美咲はとっくに退院できるはずなのに、彼女自身がまだ病院に留まることを頑なに主張し、外出しようとしない。この数日間、私たちは暗黙の了解のように一言も交わさず、空気には重苦しい沈黙が漂っていた。

この日の午後、佐藤美咲に付き添っていたのは私一人だけだった。病室は静寂に包まれ、私はベッドの横の椅子に座って静かに本を読んでいた。突然、佐藤美咲が沈黙を破った。彼女は私の前に立ち、それまで病弱そうだった顔に不思議な微笑みを浮かべていた。

「静香、これ見て、何だと思う?」佐藤美咲は笑いながら...

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