第55章

マンションに戻ると、平沢雪乃はすでに夕食を作って待っていてくれた。

私たちが食事をしながら話していると、突然また携帯の着信音が鳴った。母の秘書からの電話だと分かった瞬間、不吉な予感が胸に込み上げてきて、電話に出た。

受話器から秘書の焦りきった声が聞こえてきた。

「静香お嬢様、やっとつながりました。すぐに病院に来てください。松本社長が今、救急処置を受けています」

頭の中が真っ白になった。午後、会社を出るときはまだ母は元気だったのに、たった数時間でどうして救急処置を受けることになったのだろう。悪い考えが頭の中で狂ったように広がっていく。心臓の鼓動が急に速くなり、喉から飛び出しそうな勢いだ...

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