第57章

救急室の扉が開いたのを見て、遠くに立っていた秘書が急いで駆け寄ってきた。母が救急室から運び出されると、医師は汗で濡れたマスクを外した。

「今は一時的に命を取り留めましたが、まだ生命の危険から脱したわけではありません。今後さらなる経過観察と治療が必要です」

医師と看護師は母のベッドを観察室へと運び、秘書もその後に続いた。

この瞬間、私の宙に浮いていた心がようやく落ち着き、涙が目尻から零れ落ちた。全身の力が抜け、青木易扬の体に寄りかかる。青木易扬は両手で私の肩を支え、潤んだ目で私の顔を見つめていた。

「静香ちゃん、なぜ早く松本おばさんが救急だって言ってくれなかったの。一体何があったの?」...

ログインして続きを読む