第72章

金曜の夜、山田さんが台所から最後の一皿を運んできた時、佐藤美咲と山本翔一が揃って二階からゆったりと降りてきた。山本翔一は甘やかした表情で佐藤美咲のために椅子を引く。その優しい表情は、私が長いこと目にしていなかったものだ。佐藤美咲のその媚びたような愛らしさは、見るだけで虫酸が走る。

「お兄さん、見て。美咲の新しいネイル、すっごく可愛くない?」

佐藤美咲は甘えた声でそう言い、山本翔一の目の前で手をひらひらとさせた。

山本翔一はそっと彼女の手を握り、しげしげと眺めてから笑った。

「ああ、綺麗だ。よく似合っている」

私は台所からご飯を運んできたところで、ちょうどその光景を目撃してしまった。...

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