第79章

「美咲がネットに悪い情報を流したと言うのか?」

そう聞き返した山本翔一の声には、信じられないといった色が濃く滲んでいた。彼はあまりにも妹を過信している。彼女を完璧で無垢な白百合のように思い込んでいるのだ。それに引き換え、今の私はまるで、意図的に佐藤美咲を陥れようとする悪人のようだった。

それでも、私の切実な口調と涙声を聞いて、山本翔一も反応せざるを得なかったようだ。

「静香、この件については俺から美咲と話をつける。だが、もしお前が意図的にあいつを陥れようとしたことが分かったら……俺のやり方は分かっているな?」

私が何か言う隙も与えず、山本翔一は一方的に電話を切った。

心に冷たい風が...

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