第90章

「いいえ、難しくはありません」松本秘書は首を横に振って否定した。「技術部が特定しました。ただ、社長に不利益な情報を最初に発信したIPアドレスが……『山本家の別荘』だったのです」

「山本家の別荘?」

私は愕然とした。

「山本家の別荘……つまり、私の家から……」

私は呆然と呟く。

私の動揺を察した松本秘書が、神妙な面持ちで口を開く。

「ご家族に関わることだからこそ、軽々しくご報告できませんでした。鈴木社長、山本家の中で誰か……心当たりはございませんか? 恨みを買うような相手に」

「心当たり……」

私と折り合いが悪いのは、佐藤美咲ただ一人だ。私は反射的に山本翔一を除外した。たとえ私...

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