第10章 松本家のすべては君のものだ

土曜の午前。松本霞澄は松本家へ戻ってきた。

新しく雇われた使用人が彼女を呼び止め、招待状を差し出せと手を伸ばしてくる。

「招待状はありません」

まだ松本家の人間だ。主の側が、招待状など持つはずがない。

だが使用人は、質素な格好の松本霞澄を値踏みするように眺め、露骨に鼻で笑った。

「ないなら帰って。ここはタダ飯食いの場所じゃないんで」

バタン、と門が閉まる。松本霞澄は外に締め出された。

しばらく呆然と、その固く閉ざされた扉を見つめる。やがて唇の端が、苦く持ち上がった。

自分から家を出たのは本心だ。それでも、この仕打ちはやっぱり胸に刺さる。

最初から最後まで——この家でいちばん...

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