第118章 君を娶る

エレベーターの扉が開いた瞬間、時川樹がよろよろと転がり出てきた。――そして、松本霞澄のその言葉をちょうど耳にして、両足ごとエレベーターの中に縫い付けられたみたいに固まる。

人と人の差は、残酷なくらい大きい。

自分はすべてを賭けても、松本霞澄から引き出せたのは、渋々の「入籍だけなら」という返事。きっと、場当たりの逃げ道にすぎない。

けれど緒方廷治は違う。

彼は何もしなくていい。そこに現れるだけで、彼女のほうが「どうにかしてでも嫁ぐ」道を探してしまう。

扉は開いたのに、誰も出てこない。

それが妙で、松本霞澄が何かを察して振り向こうとした、その瞬間――緒方廷治が彼女の身体を強引に引き寄...

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