第139章 彼女は彼を手放せない

「あの子が勝手に出ていったのよ。あなた、気づいてなかったの? そもそも一緒にいたくないって顔に書いてあったじゃない。私が迎えに行ったら、待ってましたって勢いでついてきたわ」

保坂昭江はそう言いながら、緒方廷治の反応をうかがった。彼がまるで最初から分かっていたかのような顔をしているのを見て、手応えを得る。なら、押し切れる。

「廷治。あなたは私の子よ。明珠がいいと言うなら、私だって松本霞澄と一緒になるのを止めたりしない。ただし――結婚前の体面くらい、明珠に立ててあげなさい。ね?」

緒方廷治の表情は意外なほど落ち着いていた。昭江の胸に、かすかな希望が灯る。まだ理性が残っているのかもしれない―...

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