第151章 彼だけが知っている、とても痛い

時川樹は、ずっと無能だと決めつけていた松本希実が、こんなにも核心を突く問いを投げてくるとは思っていなかった。思わず、言葉を失う。

松本霞澄の顔が脳裏をよぎり、胸の奥がじくりと痛んだ。

前に彼女が緒方廷治に連れて行かれてからというもの、姿はおろか、消息ひとつ掴めていない。

いまや緒方廷治は新谷明珠と正式に婚約した。そうなれば、松本霞澄の存在はますます厄介になるはずだ。――彼女は、いまどうしている。無事なのか。

「時川樹? 時川樹!」

何度呼ばれても返事がないことに苛立った松本希実が、力任せに時川樹を押した。ようやく我に返った彼は、うっとうしそうに眉を寄せる。

「……何だ」

露骨な...

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