第156章 映画を観る

会議が終わるや否や、新谷父は一言も余計なことを口にする気がなかった。新谷明珠の腕をつかみ、低い声で言い放つ。

「お前、来い」

今夜は緒方廷治と映画の約束がある。そんなときに父親に引き止められ、新谷明珠は露骨にむくれた。

「パパ! 今夜は廷治とデートなの。用事があるなら、帰ってからじゃだめ?」

ここまで来ても頭の中は男のことばかり――その現実に、新谷父は本気で崩れそうになった。

この目を覚まさない娘に平手のひとつでも食らわせたい。だが、そう育てた責任は自分と妻にもある。女の子はのびのび無邪気に育てればいい、いずれ良い夫を見つけて穏やかに暮らせばいい。ずっと、そう信じてきた。

けれど...

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