第163章 新生活

大洋の向こう、海辺の一軒家のヴィラ。

同じ「帝都日報」を、篠崎文禾が松本霞澄の手からすっと引き抜いた。

「すみちゃん、もう二十分以上見てるよ。今日のニュース、そんなに面白いの?」

声はあくまで柔らかく、責める色もない。けれど松本霞澄は、ばつが悪そうに視線を落とした。

篠崎文禾の目が紙面へ落ちる。最初に飛び込んできたのは、緒方廷治と新谷明珠の結婚写真だった。

新郎の不本意さは一目で分かる。だが式は挙げられ、婚姻届も出された。どんな顔をしていようが、結果は変わらない。

緒方廷治と会った二度のことが、篠崎文禾の脳裏に蘇る。

あの男はそのたびに「松本霞澄がどれほど好きか」を甘い言葉で並...

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