第17章 お前はいったいどこが臆病なんだ?

彼の口調は相変わらず冷たく、問い詰めるようだった。けれど、その瞳の奥には――どうしようもない期待が揺れていた。

ただ、松本霞澄には見えていない。

「日記」という二文字を耳にした瞬間から、彼女の頭の中は真っ白だった。

たとえ宴席での一件がなくても、松本霞澄は緒方廷治に自分の想いなど知られる気はなかった。まして今や、あの日記は彼女の「企み」の証拠にされている。

認められるはずがない。認めてしまえば終わる。

緒方廷治のやり方は、松本家の人間よりずっと容赦がなく、ずっと恐ろしいのだから。

「ち、違います……あれは、適当に書いただけで……」

言い終えた途端、胸の奥がずきりと痛んだ。

本...

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