第27章 好きな人を前にして意地を張るな

松本霞澄は、えづくように一度だけ喉を鳴らすと、反射的に口元を押さえた。

緒方廷治が動きを止める。すっと距離を戻し、氷のような声で問う。

「何が気持ち悪い」

その一言が、霞澄の息を詰まらせた。

――もしかして、妊娠に気づいた?

刹那、頭の中をいくつもの思考が駆け抜ける。

この子を認める?

……ない。

すぐに病院へ連れていって堕ろさせる?

……する。

もっと残酷に、私を壊す?

……たぶん、それも。

その三つだけで、もう向き合う勇気が消えた。早くここから出たい。

身体のため。尊厳のため。それと――この子のため。

そして、この瞬間になって初めて、心の奥が告げる。

本当は...

ログインして続きを読む