第29章 彼女を自分の世界から消し去る

緒方廷治は無表情のまま、鏡の中で楽しげに語り合う男女を見据えていた。

江口惟純のたった二言と、木下義が送ってきた一枚の写真。そのせいで、四十分の道のりを二十分に縮めてまで駆けつけたというのに――目の前にあるのは、松本霞澄が見知らぬ男と甘ったるくじゃれ合っている光景だった。

……俺は何をしている。

気でも触れたのか。何かに取り憑かれたのか。

とっくに飽きて捨てていいはずの女のために、こんなみっともない真似をする価値がどこにある。自尊も品位も投げ捨てて。

その気になれば、松本霞澄なんかよりずっといい女はいくらでも寄ってくる。さっさと俺の世界から消してしまえばいいだけだ。

――そのとき...

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