第31章 寝て情が芽生えた

「霞澄! 答えろ!」

「いい子だから……彼に言ってやれ」

ドア一枚を隔てた二人の男に挟まれ、松本霞澄は身動きが取れず、頭の中までぐちゃぐちゃになった。

「緒方廷治……」

まずは目の前の、手が早い男をどうにかしようとした。けれど、その熱を帯びた視線とぶつかった途端、喉がきゅっと締まり、言葉が出なくなる。

緒方廷治はもともと頑固だ。まして今は、正気の皮をかぶった狂気みたいで――数言で説き伏せられる自信なんて、どこにもなかった。

だから霞澄は、ドアの外にいる時川樹へ声を向ける。

「私、平気。心配しないで」

ノックが止んだ。

それでも時川樹の声は、濃い不安を含んだままだった。よく聞...

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