第44章 君と時川樹、試してみよう!

「霞澄」――その二文字を、保坂雲はもう何度も口にしていた。とうとうそれが、保坂昭江の耳に引っかかる。

「霞澄って、誰?」

その頃。

松本霞澄は、病室で「へくしっ」とくしゃみをした。

次の瞬間、男の体温が残った上着がふわりと肩に掛けられる。隣の椅子には時川樹が座っていて、頭を垂れたまま顔を上げようとしない。まるで叱られるのを待つ子どもみたいに。

霞澄は小さく息をつき、困ったように笑った。

「時川……そんなふうにしなくていいよ。誓って言うけど、今この瞬間までは、あなたのこと責めてない。だけど……」

わざとそこで言葉を切る。案の定、時川樹の肩がびくりと跳ねた。

彼は慌てて顔を上げ、...

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