第58章 代わりのないものなどない

賀言の「正義ヅラ」は、その瞬間、顔の上でぴたりと固まった。

彼はぶるぶると震える手で電話に出ると、声色にさえ、これまでにない媚びが混じった。

二、三言やり取りしただけで、もう松本霞澄に難癖をつけている余裕などない。菊池青果に挨拶することすら忘れ、そそくさと立ち去っていった。

「いや……ちょ、ちょっと待ってよ。あの人、なんであんなことできるの?」

賀言の背中が完全に見えなくなっても、菊池青果はまだ呆然としていた。

沈黙を貫く松本霞澄へと顔を向けた途端、吐き出し口を見つけたみたいに、矢継ぎ早に言葉が溢れ出す。

「松本補佐、賀言さんってうちのご近所で、昔から成績優秀で性格も穏やかで……...

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