第60章 俺の女に近づくな

彼女は立ち上がると窓辺へ歩み寄り、緒方廷治に背を向けたまま、外に広がる無数の灯を見つめて、深く息をついた。

「あなたが心配してくれてるのは分かってる。でも――この先、一緒に暮らす時間なんていくらでもあるでしょう? だから、この半月だけは一人でいたいの」

そのひと言だけで、緒方廷治の機嫌はあっさり直った。

――この先、一緒に暮らす時間なんていくらでもある。

その一節だけで胸の奥が熱くなる。力が湧く。幸福で満たされる。だから後半の拒絶の言葉ですら、妙に嬉しく受け入れられてしまった。

「分かった。一人で住むのは許す。けど、ここはさすがに物騒すぎる。引っ越しは絶対だ。デウィン館に来ないとし...

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