第62章 こんなふうに生きて何の意味がある?

松本霞澄が加賀言と話していると、ドアの外からノックが響いた。

「松本補佐、いらっしゃいますか。外にお客様です」

受付の声だった。

霞澄は立ち上がって扉を開け、念のために訊く。

「どなたが私に?」

受付は答えた。

「新谷というお嬢さまです」

新谷――霞澄の脳裏に、真っ先に浮かんだのは新谷明珠の顔だった。

背後で、加賀言が手を滑らせたのか、水の入ったコップが倒れてしまう。彼の肩がびくりと跳ね、明らかに動揺している。

少し考えたあと、彼は低い声で訊いた。

「行くのか? 必要なら、緒方社長に一言――」

その言い方が、霞澄の胸をちくりと刺した。

何なの、それ。正妻に呼び出された...

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