第78章 君の味は悪くない

江口惟純は苛立っていた。頭の回る緒方廷治が、さっきの自分の含みを読み取れないはずがない。だとすれば、今わざわざ彼女に酒を飲ませようとしている意図も、理解しているはずだ。

「廷治さん、彼女は本当に具合がよくないんです。だから、俺が――」

言い終える前に、緒方廷治が容赦なく遮った。

「惟純。たとえ付き合っていようが、彼女は彼女だ。お前が何でも代わりに決めるな。松本霞澄、この酒、飲むのか飲まないのか」

空気が、ひゅっと歪んだ。

新谷明珠が不思議そうに緒方廷治を見つめる。今の彼は松本霞澄と江口惟純を追い込んでいるようにしか見えないのに、明珠にはどこか――言葉にできない合図のようなものがある...

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