第79章 私の名前を呼んで

今の松本霞澄なら、たとえ緒方廷治が「恐竜は俺が絶滅させた」と言い出しても、迷いなくうなずいてみせるだろう。

保坂昭江の機嫌を損ねたくない。目に見えて酔っている男と、わざわざ言い争う気もない。

満足したらしい緒方廷治は唇の端をわずかに持ち上げ、そのまま階段を上がっていった。

松本霞澄は今にも泣き出しそうになる。

「……いったい、どこへ連れて行く気ですか」

こんな板挟みの状況になると分かっていたなら、さっきもっと酒をあおって、いっそ泥酔してしまえばよかった。

緒方廷治の目はどこか虚ろなのに、足取りだけは妙にしっかりしている。低い声で言った。

「俺の部屋だ。見てみたくないのか」

松...

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