第83章 彼は彼女の後ろ盾

保坂昭江が罵っていた相手は松本霞澄だった。だが、その言葉にいちばん深く抉られたのは、緒方廷治のほうだった。

脳裏に浮かぶのは、取り乱した松本霞澄が、涙をこらえながら自分を責め立てたあのときの顔。そして、胸を切り裂くようなあの言葉。

「つまり私を囲って、これからも愛人のままでいろってこと? 表向きはみんな愛想よくしても、腹の底じゃ浮気相手だって笑うんでしょ。今がいつの時代だと思ってるの、大正じゃあるまいし」

あのとき、自分は何と答えたのだったか。

そんなことにはならない、と言った。

この程度のことはこの世界じゃ珍しくない、とも言った。

自分がついている以上、彼女を侮辱する者などいな...

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