第87章 結婚はいつですか?

「私、ぜんぜん力入れてないのに……どうして? ねえ、見せて!」

切羽詰まった声に、緒方廷治は芝居の続きを忘れたように彼女を引き寄せ、ぎゅっと胸に抱き込んだ。

「慌てるな。大丈夫だ……平気。お前が俺を心配してくれて、俺のことでそんなふうに焦ってくれて……それだけで幸せなんだ。霞澄、すみちゃん……」

言葉が途切れ、名前だけがこぼれる。彼は松本霞澄の髪に、何度も何度も口づけを落とした。

霞澄には分かった。廷治の感情は、もう制御の端に引っかかっている。怖くなって、彼の胸を必死に押し返す。

「ち、違う……勘違いしないで。あなたがここで何かあったら……あなたのお母さまが、私を責めるから」

霞...

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