第95章 久しくなるうちに、彼女は狂ってしまう

宴会場の目立たない片隅で、佐野静は小動物みたいにちょこまかと動き回り、松本霞澄の皿に料理を運んでは「はい、これも」とせっせと追加していく。

もちろん、それが本当の目的ではない。

静の狙いはただ一つ――人だかりの中心で飛び交っている“最新の話”を、できるだけ正確に拾うことだった。

彼女は朗らかで、人に好かれるタイプだ。最前列に割り込めなくても、周囲の耳から耳へと回る情報を手際よく繋ぎ合わせ、あっという間に筋道を把握してしまう。

そして上機嫌のまま、戦利品みたいに話を抱えて霞澄のもとへ戻ってくる。

「霞澄さん、そりゃあお姉さんの様子がおかしいわけだよ。妊娠してるんだって! 妊娠って女の...

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