第96章 彼女がすごいことは知っている

松本霞澄の表情が、ぴくりと固まった。

別に予想外の展開ではない。なのに、胸の奥がじわりと酸っぱくなるのを止められなかった。

松本希実の言うとおりだ。緒方廷治がこのところ見せていた妙な優しさも、不自然なくらいの気遣いも――結局は、霞澄を「煙幕」として差し出させるための餌にすぎない。

そう考えると、希実の妊娠は……皮肉にも、自分を土壇場で救ってくれたことになる。

――ただし。

いつか緒方廷治が、希実の腹の子が自分の子ではないと知ったら。あの男は、どんな顔をするのだろう。

ここまで来れば、この騒ぎもそろそろ終幕だろう。希実が得意げに勝ち誇る姿など、これ以上見たくない。

霞澄は適当な口...

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