第6章

 午前三時。スマホが震えた。

 私は浅い眠りから弾かれたように目覚め、枕元のスマホをひっつかむ——介護施設からだ。

「桐谷さん、おばあちゃんの容態が……」看護師の声が震えている。「すぐに来てください」

 指先が強張った。

「……分かりました」

 通話を切り、私は機械的に服を身に着ける。下腹部がまだしくしくと痛む。三日前の手術の傷跡が疼いているのだが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。

 未明の東京の通りは空っぽで、タクシーが濡れたアスファルトの上を疾走していく。私は窓ガラスに頭をもたせかけ、飛ぶように過ぎ去るネオンの光を眺めていた。頭の中は真っ白だった。

「お客さん...

ログインして続きを読む