第6章

雨が激しく窓を打ちつけ、その一撃一撃が私の張り詰めた神経を叩いていた。もう午後十一時。今夜は早じまいするつもりだったのに。

明里との会話以来、感情はぐちゃぐちゃで、タトゥーの針を持つ手もろくに安定しなかった。

作業台に散らかった絵の具のチューブを片付けていると、アトリエのドアが乱暴に押し開けられた。

ずぶ濡れの始が飛び込んできた。髪は額に張りつき、着ていた白衣はすっかり濡れて、下の青いスクラブが透けて見えている。まるで嵐の中を駆け抜けてきたかのようだった。

「遥!」彼は喘ぎ、その目には今まで見たこともないような焦りの色が浮かんでいた。「何が悪かったのか分からないんだ。彼女...

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