第8章

その日の夜、隼人が迎えに来てくれたとき、私は明里が訪ねてきたことを話した。

「賢明な判断だ」と、隼人は車を走らせながら言った。「心が他の誰かにある人を、無理に愛すべきじゃない」

「隼人はどうなの?」ふと、私は訊ねた。「私の心が今、混乱しているのは分かってるでしょ。気持ちの整理がつくまで、待っててくれる?」

隼人は車を路肩に寄せ、私の方を向いた。「遥、君に過去十年をすぐに忘れろなんて言わない。でも、知ってほしいんだ。俺は今の君を愛してる――本当の君を、過去も痛みも全部含めて。誰かの代わりになろうとしてるんじゃない。ただ、君を愛したいんだ」

その言葉は、私の心の一番奥深い場所...

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