第1章

浅桐瑠璃視点

キャンプファイヤーの火が消えかけた頃、高橋尚樹が私の手を取ってグループから引き離した。ほとんどの生徒はもう自分たちのテントに戻っていて、指導員の先生たちは管理棟の近くで最後の点呼を取っているところだった。私たちは暗い森を抜けてキャンプエリアへと歩いた。心臓が胸から飛び出しそうだった。

「こっちだ」と、彼は低い声で言いながら、自分のテントへと私を導いた。

この瞬間を、私は六年間も夢見てきた。密かにもっと深い関係を望みながら、ただの親友として過ごした丸六年間。彼が他の女の子の話をするのを聞きながら、内心死にそうな思いで平気なふりをし続けた六年間。私に気づいてくれるのを待ちながら、学校中の女子の半分と付き合うのをただ見ているしかなかった六年間。そして今、それが現実になろうとしていた。

テントの中に入ると、息をつく暇さえなく彼にキスをされた。

「この時を待ってたんだ、瑠璃」と、彼はキスの合間に言った。

彼が、私を待っていてくれたんだ。

その後に起こったことは、まさに私が夢見ていたすべてだった。彼の手つきは優しくて、私がずっと聞きたかった言葉を何度も囁いてくれた。終わった後も、私たちは彼の寝袋に一緒にくるまっていた。彼の胸に頭を預け、呼吸がだんだん穏やかになっていくのを聞いていた。

「そばにいてくれ」と、彼は私をさらに強く抱きしめながら言った。

私が彼のそばを離れるわけがない。もう決めていたのだ。彼と一緒にT市に行くために、C大の合格も、全額給付の特待生奨学金も諦める、と。毎日彼と一緒にいられることに比べたら、C市の映画学科なんて何の意味があるだろう?そう、自分に言い聞かせていた。

少しの間、眠ってしまったのだと思う。目を覚ますと、テントの中はさらに暗くなっていて、隣に高橋尚樹の姿はもうなかった。手を伸ばしてみると、彼がいたはずの寝袋のスペースは空っぽだった。まだ少し温かいけれど、でももう誰もいなかった。

きっと、トイレか何かに立っただけだろう。でも、私は興奮しすぎていて、とても寝付けそうになかった。全身に電気が走っているみたいだった。寝袋の横にあった自分のiPadを手に取り、彼が戻ってくるまで何か適当なドラマでも見ていようと思った。

スクリーンが明るくなり、画面の上部にメッセージの通知が二十件ほど殺到した。一瞬、混乱してそれを見つめていたが、誰のアカウントでログインしているのかに気づいた。

高橋尚樹のアカウント。

そうだ。昨日、彼のスマホの充電が切れたからって、お母さんに何かの登録フォームを送るために私のiPadを貸したんだった。彼が自分のApple IDでログインして、そのままログアウトし忘れたんだ。

自分宛てのものではないのは明らかだから、通知をスワイプして消そうとした。でもその時、グループチャットの名前が目に入った。「男ども」。それは高橋尚樹が、斎藤健や千野誠、それに学校の他の何人かと作っている友達グループだった。

斎藤健:「おい、どこだよ?まだキャンプファイヤーやってるぞ」

高橋尚樹:「ちょっと野暮用。5分で行く」

千野誠:「おやおや、ついに浅桐瑠璃とキメたか?」

胃が妙な感じでひっくり返った。「キメたか」。変な言い方だと思ったけど、まあ、男の子ってそういう話し方をするものよね?

高橋尚樹:「まあな(笑)。新学期が始まる前に済ませとかないとな」

済ませておかないと?

手が震え始めたけれど、私は読み続けた。やめるべきだとわかっていた。このバカげたアプリを閉じて、何も見なかったことにすべきだとわかっていた。でも、できなかった。もっと前のメッセージまでスクロールした。

高橋尚樹(昨夜、午後9時):「お前ら、今夜が決戦だ。幸運を祈っててくれ」

斎藤健:「ついにヤるのか?時間かかりすぎだろ、お前」

ヤる?吐きそうだ。

高橋尚樹:「舞を狙う前にどっかで練習しとかないと。舞の前で童貞だと思われたくないし」

すべてが止まった。テントも、外の森も、私の心臓の鼓動も、何もかもが完全に停止した。私はその一文を、もう一度読んだ。そして、もう一度。

舞を狙う前の、練習。

千野誠:「ウケる。じゃあ浅桐瑠璃はお前の練習台ってわけか?」

高橋尚樹:「まあそんなとこ。中学から俺のこと追いかけ回してるし、一番ちょろい。しかも聞けよ――俺のためにC大諦めるんだとさ。全額給付の特待生奨学金も全部な」

息ができなかった。目の前で文字が泳いで、自分が正しく読めているのか確かめるために五回も瞬きをしなければならなかった。

千野誠:「は?マジかよ。全額奨学金付きのC大映画学科だろ?ガチであいつの夢じゃん」

斎藤健:「うわ、ベタ惚れだな。お前を追いかけてT市大学に行くつもりかよ、あの女」

高橋尚樹:「その通り。だからあいつがどこにも行かないってわかるんだよ。完璧な滑り止めだ」

iPadが手から滑り落ちそうになった。一番ちょろい女。滑り止め。それらの言葉が頭の中で何度も何度も繰り返される。叫びたかったのに、声がまったく出なかった。

どうやら私は、自分がどれほど愚かだったかを正確に知る必要のあるマゾヒストらしかった。私はスクロールを続けた。

高橋尚樹(先週のメッセージ):「浅桐瑠璃が寮の部屋割りについてしつこく聞いてくる。うぜえ」

千野誠:「じゃあなんでまだキープしてんだよ?」

高橋尚樹:「保険だよ。もし舞がダメだったとしても、少なくとも浅桐瑠璃はいる。あいつはどこにも行かないからな」

涙が顔を伝ってとめどなく流れ落ちた。私は血の味がするほど強く唇を噛みしめた。

外で足音がした。葉を踏みしめるゆっくりとした足音が、テントに近づいてくる。

彼が戻ってきた。

私はほとんど投げ捨てるようにiPadを自分から遠ざけると、ぎゅっと目を閉じ、彼が入ってくるであろう方角から背を向けて横向きになった。心臓がうるさいくらいに鳴り響いていた。テントのジッパーが開く音がした。

「起きてるか?」と高橋尚樹が囁いた。

私は微動だにしなかった。息さえしなかった。

彼は私の後ろから寝袋に入り、ごく自然なことのように、私の腰に腕を回してきた。首筋にかかる彼の息が感じられて、肌が粟立った。

「いい夢を、瑠璃」と彼は言った。

私は暗闇の中、枕がぐっしょり濡れるのも構わず、ただ固く目を閉じて横たわっていた。彼はすぐに眠りに落ち、ゆっくりと深い寝息を立て始めたけれど、私はまったく眠れなかった。一秒たりとも。目を閉じるたびに、あのメッセージが浮かんでくるのだ。

六年間。私は人生の丸六年間を、私のことをただの練習台としか思っていない誰かのために無駄にした。私が自分の本当の夢を諦めて彼についていくことを笑い話にする誰かのために。彼のためなら何でもすると知っていて、それをいいことに私を保険としてそばに置いていた誰かのために。

どうして私は、こんなにも、信じられないほど馬鹿だったんだろう?

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