第8章

浅桐瑠璃視点

ジープが私の家の前でゆっくりと停まった。

「大丈夫?」

ハンドルを握ったまま、柊木湊がこちらを窺う。

「うん」

シートベルトを外しながら答える。

「ただ、戻ってきたのが不思議な感じがするっていうか、ね?」

彼はいつもの屈託のない笑顔を見せ、車から降り始める。

「ほら、荷物、降ろそう」

車から半分身を乗り出した、その時だった。目に入ったのは。高橋尚樹。

10メートルほど離れた自宅の芝生に、彼は立っていた。バスケットボールらしきものを手に、ただじっと、こちらを見つめている。私を。そして、私が後部座席からダッフルバッグを取り出すのを手伝ってくれている...

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