第161章 彼の世界から消える

「桜井瑞希……」

黒崎恒一は彼女に用があり、仕方なく自ら桜井瑞希が所属する部署まで足を運んだ。

だが中へ入った途端、周囲の視線が一斉にこちらへ集まる。肝心の桜井瑞希の姿だけが、どこにもない。

「黒崎社長、桜井瑞希さんにご用件ですよね? ご家庭の事情で休暇を取られていて、本日もお休みです」

社員の説明を聞いて、黒崎恒一はようやく思い出した。休暇を承認したのは自分だ。彼女にきちんと片をつけさせるために。

それから二日が過ぎた。

申請書どおりなら、今日は桜井瑞希の復帰日だ。

黒崎恒一は朝一番で彼女の部署へ向かった。こんなに早いのは、胸の奥のざわつきが、輪郭を持って迫ってきていたからだ...

ログインして続きを読む