第178章 危うく「事故」になりかけた

「こんにちは、桜井さん。お久しぶりですね。まさか転職されていたとは」

桜井瑞希は目の前の男を見た瞬間、背筋がひやりとした。――まずい。

隣にいた黒崎恒一が、眉をわずかに吊り上げる。

「五条社長。以前からご存じだったんですか」

「ええ。あの頃、桜井グループで――」

そこまで言いかけた五条葵の言葉を、桜井瑞希の気まずい咳払いが遮った。彼女は咳の合間に、必死で目配せまで送る。

今日は桜井瑞希が病休明けで出社した初日だ。まさか、こんな形で昔の知り合いにぶつかるとは思っていなかった。

五条葵は五条グループの現社長。以前、案件の都合で桜井瑞希が桜井グループ側の責任者として五条葵と組み、その...

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