第183章 何のために来たのか

黒崎グループ本社の上階。窓辺に、ひとつの影があった。外では、これから宴へ向かうのだろう、楽しげに連れ立って歩く一団が見える。

その背中を――黒崎恒一は、ただ見下ろしていた。

オフィスの床には、書類と資料が散乱している。どれもこれも、同じ名前で埋め尽くされていた。桜井瑞希。

黒崎恒一は、窓の外の笑顔に一切染まらない。むしろ胸の底が、じわじわと沈んでいく。

「黒崎社長。桜井瑞希さんたちが向かった店、突き止めました。住所は携帯のメールに送ってあります」

鈴木謙介が報告しても、黒崎恒一は反応しなかった。視線は窓の外に縫い付けられたまま。

桜井瑞希の姿が、完全に視界から消えるまで。

鈴木...

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