第192章 交換

ウェディングドレス専門店を出た桜井瑞希は、ドレスの入った袋を抱えたまま、胸の奥に小さな不安を飼っていた。

本来なら、今の自分が黒崎恒一にドレスを買ってもらう立場じゃない。恒一の言い分が筋が通っているのは分かる。けれど――結婚という節目の、意味を持つ衣装は、意味を持つ人が選んで贈るべきだ。

そう思った瞬間、心臓がきゅっと縮む。

……本当なら、いちばん愛している人から受け取るはずだったもの。

瑞希は無意識に、衣袋を握る指に力を込めた。

そのとき、視線が刺さるのを感じた。水野優奈だ。

優奈は瑞希と目が合うと、すぐにぷいと顔を背け、何事もないように尊大な表情を作った。

瑞希には分かる。...

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