第205章 意外のキス

黒崎恒一は、なぜこのスイートルームにいるのか。

それは――二十分前に遡る。

黒崎恒一は諏訪宏光と会話を交わしながらも、どこか上の空だった。視線だけは、ずっと桜井瑞希と関根承吾を追っている。

そのときだ。

フルーツジュースを持った子どもが、いきなり駆けてきた。どんっ、とぶつかった拍子に、ジュースが黒崎の胸元へべしゃりと飛び散る。

「お、おじさん……ご、ごめんなさい……!」

子どもは黒崎の冷えた顔を見た瞬間、わっと泣き出した。

黒崎はこめかみを押さえたくなる。責めるつもりなど、最初からない。

すると慌てた様子で保護者が頭を下げた。

「黒崎社長、申し訳ありません。子どもに悪気はな...

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