第83章 私に興味がないんじゃなかったのか

黒崎恒一は唇の端をつり上げ、悪戯めいた笑みを浮かべた。

「誰が、お前を監禁するなんて言った。今は法治国家だ。お前のために俺まで巻き添えを食うほど、割に合わない。――忘れたのか。お前、半月前にもう研修期間を終えてる。つまり今のお前は、うちの正式社員だ。法的効力もある。黙って会社を辞めたら……こちらは訴える権利がある」

桜井瑞希は目を見開いた。

「私、いつその契約書にサインしたの?」

「研修が終わった時点で自動契約だ。いちいち本人の署名なんて要らない」

黒崎恒一の奥底の見えない瞳が、今は妙に冴えている。桜井瑞希の心臓は、底なし沼へ落ちていくみたいに冷えた。

――そんな反則、あり?

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